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認知症とはなんでしょう ④

一、このまま息子夫婦と生活を続けるためには、環境面に配慮して適応を手助けする必要がある。

一、独り暮らしに戻すには心配な要素があるので、見守りができる環境を整える必要がある。

 

Aさんはどちらを選択したかと言うと…なんと両方。できることはとりあえずやってみようと行動されました。

 

まずは、母と同居するためにはどんな配慮が必要だったのかを考えなおしました。

お母さんは何故、同居を拒んていたのでしょうか。

Aさんはお母さんからその理由をゆっくり聞くことしたのです。

答えは意外と単純でした。

独り暮らしをしていた環境にすっかり適応していて、近所づきあいもしっかりできていた点です。そして、死別した夫のお墓に歩いて通える距離であることも理由のひとつでした。

先行きの不安は抱えていたものの、お隣の人が介護サービスを受けていたのもあり、自分が介護が必要になれば紹介してもらえないか…そんな話までしていたそうです。

同じ悩みを共有し、相談できて、楽しく交流ができている環境がありました。

きっと良好な関係を断つことが嫌だったんでしょうね。

 

一方、息子夫婦との生活は1からのスタートだったわけです。

環境も変わり、お母さんにとっての負担を考えることができていなかった…Aさんは親孝行のつもりでした。独り暮らしのお母さんにとってそれが最善だと疑いませんでした。

母の考えを知らなかった。とAさんは気づき反省しました。

 

 

お母さんは同居を受け入れましたが、Aさん宅に入ると必要なもの以外の荷物整理ができないままでいました。衣類はタンスにしまえていましたが、段ボール箱がそのままになり、整理整頓ができていなかったのです。

Aさんの奥さんはそのことを知っていましたが、勝手に荷物を触るのは抵抗があり手伝うことができませんでした。

結果として、環境の変化に適応できないことや、気を使う不安などから

目立たなかった認知症が進行してしまったのではないかと思われます。

 

以上のことからお母さんの不安要素を理解したAさんは動きます。

お母さんに対して次の約束をして、実行しました。

①Aさんが仕事休みの日はお墓参りを一緒にする。

②アパートのお隣さんとの交流を続けれるように、定期的に会いに行く。

 

たったそれだけ?と思うかもしれませんが、Aさんのお母さんは喜んでいたそうです。

 

まず1つめ お墓参りをすることでお母さんは精神的に落ち着き始めました。

独り暮らしをしていたころは週1~2回はご主人の墓前で手を合わせていました。

2か月以上も墓参りをしなかったのははじめてのことだったので、とても安心したようでした。

 

2つめ アパートのお隣さんとの交流ですが、出かけるとなると大変なので

お隣さん宅でお茶を飲むことになりました。Aさんはお隣さんに協力をお願いし

車での送り迎えをしました。

お開きの際は、Aさんに迎えの連絡が届くようにしてくれました。

Aさんが車でお母さんを迎えに行くと、名残惜しいのかエントランスで立ち話を

しているところでした。

帰りの車の中でお母さんは「Aくん、ありがとうね。楽しかったよ。」と言いました。

Aさんは喜んでくれる母の姿を見て、①と②のサポートを無理なく続けていきました。

自宅ではどこかそわそわしていたAさんのお母さんは、別人のように落ち着いていったそうです。