前回、認知症の母をもつAさんの実例を聞いていただきました。
Aさんとお母さんはとても辛い経験をされていましたね。
ここからはAさんの1年間の軌跡です。
お母さんが「家に帰りたい」と言い、Aさんはとても悩んだそうです。
Aさんは奥さんに相談したり、認知症専門医の話を聞きに行きました。
すると
母はなぜ、独り暮らしの家に戻りたいと言ったのか…という考えに行きつきます。
まずはそこを考えることにしました。
お母さんが独り暮らしをしていた環境は、どういうものだったのか。
住んでいた賃貸は6畳1kの部屋で、風呂・トイレがあり1人暮らしするには不便はありません。
当時住んでいたアパートのお隣さんのお話を伺うと
「引っ越すと聞いてお隣の私はとてもさみしかったです。この辺の人は仲が良かったから。息子夫婦の家に居候するのはとても気を使うと言ってましたね。でも息子さんと暮らすんだから幸せなことだと皆で背中を押したんですよ」
という話を聞くことができました。なんでもこのアパートには1人暮らしの高齢者の人があと数名おり、みんなで助け合って生活をしてきたのだとか。
Aさんはハッとします。
よかれと思っていたが、母にとって新居に引っ越すことはとても負担だったのかもしれないと。
奥さんから実母の普段の様子を聞いていましたが、日中は自分の部屋に閉じこもり
Aさん以外の家族とは、会話にも気を使っている様子でした。
奥さんもなんとかお母さんと関わりを持とうとしてくれていましたが、
なかなか打ち解けることができなかったようです。
母の言うように独り暮らしに戻すほうがいいのか…
Aさんは認知症専門医や担当ケアマネジャーと何度も相談しました。
導き出した道は2つ。
一、このまま息子夫婦と生活を続けるためには、環境面に配慮して適応を手助けする必要がある。
一、独り暮らしに戻すには心配な要素があるので、見守りができる環境を整える必要がある。
果たしてAさんが選んだ道はどちらだったのか…
後編に続きます。